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2016/03/08

(追加編小話)☆30 始動

 車のエンジン始動は、フロントからクランク棒を突っ込んで回し、、なんて図柄を昔の映画で見ましたが、今はしっかりした始動用のセルモーターがあり、キースイッチをひねるだけでエンジンがかかります。 船のエンジンもキースイッチ1つで始動がかかる小型エンジンもありますが、ちょっと大きくなるとそういう訳にはまいりません。 結構手間がかかります。

 大きなエンジンになると、セルモーターではエンジンのクランク軸が回せません。 回せる能力があったとしても、手順が一杯あります。 まず、冷却水系統の船底弁を開けて冷却水周り等の準備、次に燃料関係で噴射管のエア抜き、燃料供給ポンプ起動、そして予備潤滑油ポンプの起動、予備ブロアの起動(2サイクル)その他、色々と準備が必要です。 その中でも潤滑油系統の圧力が重要で、圧力が上がらないと安全装置が働いて燃料が噴射しません。 この潤滑油圧力低下によるエンジン停止機構はどんな小さなエンジンにも付いています。

 それで、これらの準備を行った後に、クランク軸を回して始動させるのは、エンジンがプロペラと直結しているため負荷が大きく、高圧の圧縮空気です。 シリンダーの始動弁を介して、圧縮空気が膨張過程のピストンを押し下げ、クランクを回すことになり、燃料を噴射して爆発させ、連続回転することになります。 エアタンクボトルには、コンプレッサー(空気圧縮機)の充填により、最高3MPaの圧縮空気が詰まっており、20回ほどエンジンを始動できる容量を備えている。 陸上ではこの種のエアタンクボトルは、通常1MPa(10kg/cm2)未満の圧力で、法の定める圧力検査を免れているが、船ではエンジン始動に必要な圧力であり、5年に1回、定期検査を受けている。 船の前後進を何回か繰り返すと、エアタンク内の空気がなくなり、始動できなくなるため、船の操船者はそのことを頭に入れて操船する必要がある。

 始動準備が整った後のエンジン始動は、ブリッジから操作するのでなく、機関室のエンジンの脇で行うことが殆どである。 操縦空気圧力などのチェック後、赤いボタンを押す、、すると手記が回り始める、、ボタンを放すと、ドッコン ドッコン ドコドコドコとエンジン内で連続爆発の大きな音がする。 プロペラの振動が足下から伝わってくる。 この感動はメカニックでしか味わえない、何とも言えないものである。 感動を味わうためには一度船に乗る必要があるが、どうかな?

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