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2016/03/08

(追加編小話)☆25 電蝕

 掃海艇や、小型漁船を除き、ほとんどの大型船は鉄で出来ていて、海水という良好な電解質の液体に浸かっています。 この環境下では、プロペラなど、アルミや真鍮の異種金属との間に、海水を導体として、船体(鉄)~異種金属~海水(導体)の電気回路が出来上がり、自然と電流が流れて、陽極となった金属は海中にどんどん溶けて流れ出していきます。 これは、化学の授業で習った「イオン化傾向」という原理で、アルミ(-1.66V)、亜鉛(-0.76V)、鉄(-0.44V)など、負の電位があり、反対に、銅(+0.34、+0.52V)や金(+1.5V)銀(0.8V)などの貴金属は正の電位があります。

 そのため、銅や真鍮といった金属が沢山ある機関部付近では、アノード(陽極板)として亜鉛板やアルミ板をつけて船体の鉄が溶け出さないようにしています。 この他、アノード板の変わりに、電極を埋め込んで、強制的に電流を流して保護する方法がとられています。

 しかし悲しいかな、船体外板をつなぎ止めている溶接は、鉄以外の種々の金属が含まれ、時として、溶接部だけに迷走電流が流れ、溶接部近傍で腐食が進むことがあります。 これを防ぐには、沢山のアノード板でむらなく船体外板をカバーすることが重要です。

 気をつける場所は、船体外板だけではありません。 機関室内も注意が必要です。 というのは、船内に取り込んだ海水が溢れ、機関室には、船底にビルジという汚水がたまっており、海水、油、その他雑多なゴミなどが混ざっております。 ある時、私の管轄する社船で、ビルジの水位がどんどん上がってくるので船底から浸水していると考え、ゴミなどを掻い出して、怪しいところに即乾のコンクリートで堅め、大慌てでドックに急行した。 調べてみたら、機関室の船底外板に私の小指が突き抜けられる穴が空いていました。 原因は1年ほど前に落としたと思われる金属製のトーチ(懐中電灯)。 内側からいくつものクレーターのように腐食が進んでおり、船の揺れでゴロゴロと転がったトーチが、船底の塗膜を傷つけ、その部分から電蝕が始まった事が原因と推定された。

 小さな穴のうちは、厚い船底の塗膜に遮られていたが、穴が大きくなり堪えきれずに破孔下と思われる。 ビルジポンプがあるので、この程度の浸水で船が沈むことはありませんが、乗組員の肝は縮んだに違いありません。 本社で椅子に座り、電話応対した私は、浸水量と速度が判らず、本当に船が沈むんじゃないかと、目茶苦茶心配しました。

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