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2015/10/18

(追加編小話)☆9 ネルソンタッチ

 二つの勢力の複数の軍艦が交戦する時、それぞれが列になって並行に進み、お互いの最大火力でもって相手に砲撃するのが普通であるが、それでは単純に火力が多いほうが断然有利で、優劣の差はなかなか逆転できない。
ところが、これを圧倒的優位に立たせた海戦がある。 その一つが、日本の対馬沖でロシアがバルト海から新鋭主力艦を編成して応援に来た強豪艦隊を、日本艦隊が打ち破った海戦である。 縦隊で来たロシア艦隊(バルチック艦隊とも言われる)をT形になるよう縦列で迎え、打ち破った戦法である(1905/5/25)。
戦艦の大砲は船橋の前と後に分かれており、90°向きを変えれば、総ての大砲が同じ方向を向く、しかし、縦列で進んできたロシア艦の艦橋前方の主砲が日本艦を狙えても、後方の副砲は狙えないし、更に後続の戦艦は前方の味方艦に視野を遮られ、ろくすっぽ撃てない。 それに対し迎え撃つ日本側は全艦が全砲列が砲撃できる。 これが大きな勝因。 日本側は水雷艇1隻の損害で、日本艦隊とそれを率いた東郷平八郎の名前は世界にとどろいた。
 その丁度百年前(1805/10/21)のこと。帆装軍艦でも似たような状況で、殆どの砲列は左右に並んでおり、船首・船尾の大砲は2~4門しかない。 ヴィルヌーヴ率いるフランス・スペイン連合艦隊をトラファルガー沖で撃破したイギリスの封鎖艦隊との海戦は有名で、お互いの縦列状態から一転、中央部にくさびを打ち込むようにして割り込んだネルソン提督率いるイギリス艦隊が勝利した。 この場合は、砲戦に備えて帆を縮帆し戦列の速度が遅かったこと、大砲の射程が短いため、割り込みが素早く行えたこと、割り込んだ後は、片側しか撃てない連合側に対してイギリス側が左右両舷の大砲が撃てたこと、等が勝因となっている。 この戦法は、採用したネルソン提督にちなんで、「ネルソンタッチ」と呼ばれている。 タッチと言っても、お尻を撫でるようなものでなく、鋭い突っ込みであった。

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