« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »

2014/05/01

昔話 99 舵輪当番


汽船実習と帆船実習とで特徴が違うのは動力の有無である。風の力に任せて船を推進させるが、その他の部分でも動力がない。
船内照明や冷蔵庫には電気が必要なので、ここは発電機でまかなっているが、航海計器類は自然のものを使うことが基本。 その最たる物が舵である。 

日本丸の船尾に直径2mの大きな舵輪が付いており、船の舵を直接操作する。舵輪の中心には小さな歯車が付いており、舵輪を回して、歯車からチェーンに力を伝え、それで蛇柄を動かして舵が動く。
舵自体も大きいせいで、舵も重い。大きな波が来て舵板に当たると舵輪が勝手に回ってしまう為、舵輪当番には二人ついて操舵する。 その舵を動かすには舵輪を一回転させても、舵が角度で1゜回るかどうかというレベルなので、大きな舵をとろうとすると、二人でも大汗をかくことになる。
戦う相手は風なので、ちょっと油断すると強い風に流され、船の針路が風上、風下にずれてしまう。2~3゜ずれると士官が気が付き、怒鳴り声が飛ばされる。

舵輪の当番二人の内、風上側の人がマグネットコンパス(磁針)をのぞき込んで、「一枚右(一回転右)」とかの号令をかけて二人で舵輪を回す。もとの針路に戻すために大舵をとることは止められているし、もし大舵をとっても、またすぐ反対に舵をとり、元に戻すために舵輪を回すのはキツイので、ゆっくり舵をとってもとの針路に近づける。
マグネットコンパスのN極はきちんとした北極を指してはいないが、その近くを示しているので、まぁ概ねそっちの方向に進んでいくのでしょう。
ただ、士官の針路指示は「サウウェストバイウェストクォーターウェスト」なんて訳のわからんオーダーだから、一度聞いて判る訳がない。アンサーバックするのも大変。当直中に進路変更のないことを願って当番に付く。何と後ろ向きな考え方。

そういわれても、大舵をとるのは結構きつい作業なので、できればやりたくなかったです。
帆船の本来の持ち味を出すためにはタッキング(上手回し)を一度経験したかったが、この訓練不足ではきっと無理。ウェアリング(下手回し)がやっとの体たらくでは訓練航海の意味がないようにも思える。
確かに帆船に乗ってはいても、風と船の動きの理論的な講義は無かった。我々はヨットマンになるわけでもないし、将来的にまた帆船時代が来るわけでもないので、必要のない知識とは思うが、それでも帆船がある限りは、将来に伝えていきたい技術だと思う。

てな事を考えて舵輪をとっていると、すぐコンパスカードが揺れ、慌てて あて舵をとる羽目になる。
晴れた午後の大西洋の優しい風(Gentle breeze)を受けていると、時間がのんびり過ぎて行く。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

« 2014年4月 | トップページ | 2014年6月 »