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2013/08/21

昔話 90 メリパス5分前

日付は6月21日、アメリカ本土の寄港地に10日程で到着する。 だが、まだ暑いカリブ海の北緯23度付近である。
晴れているので、毎日の日課となっている、朝の天測(モーニングサイト)をする。 モーニングサイトでは、船の位置はハッキリとは決まらないが、太陽が東にあるので、クロノメーター(時計)と合わせて、経度方向の位置が決められる。これと正午の太陽の高さから緯度が決まって、正午の船の位置が判る仕組みである。 ダラダラ計算していては怒られる。 推定される船の位置からのズレを、クロノメーターと六分儀の角度から、5分以内に出さないと、士官から○がもらえない。 答えが0.5浬(約1㎞)ずれていても○はもらえない。 そして、その○がノートに50個ないと、出来るまで特訓というので、毎日朝8時前後は、士官の笛の音に合わせて、デッキに六分儀を持つ学生が太陽高度を測り、そのままデッキに座り込んで、ノートに計算する姿が見られる。
ちなみに、測定は十数秒の間を取って3回連続あり、リーサイド(雑用当番)は笛の音の時刻をクロノメーターから読み取り、その時刻を0.5秒単位で報告する。
この時の六分儀を覗いてみると、太陽(勿論、濃緑のガラス越しに見る)と水平線の両方の像が同時に重なって見える。 太陽の下辺を水平線に合わせるため、角度を調節しながら、六分儀も垂直になっているように少し左右に振る。 笛の音と同時に太陽の高度を目盛から読み取る。すぐまた六分儀を覗くと、太陽は水平線の少し上に見える。角度を調節し、測ってはまた目盛を読む。目盛はあってもメモリ(Memory)はないので、口の中で数字をブツクサ唱えながら、メモに書き写す。 そこからは、天測暦と計算表を使って、筆算である。 掛け算は対数表を使って行うので、基本的には、足し算引き算の連続であるが、時間がないので、流れ作業的に計算していく。 慣れている士官は3~3分半で計算結果を出す。学生も計算が終わったら士官のところに駆けつける、、、、ピー!と笛が鳴ったら○印の受付終了。 あとは正解かどうかのチェックだけ。 なかなか計算で5分を切るのは難しく、東京を出て、太平洋を渡りきった頃、私も○印がもらえるようになった。

4-8の当直も終わって、部屋に戻りのんびりとする。 11時半には昼食の用意が出来ているので、早めの昼食を食べ、ホッとしたころ、リーサイドが「メリパス5分前、メリパス5分前!」と怒鳴りながら、食堂、居室を回る。(※メリパス= Meridian Passing =子午線通過)
みんな急いでデッキに上がり、六分儀を握りしめる。
六分儀を覗いてビックリ! 太陽がどの方向に向いても同じ高さに見える。ほとんど天頂にあるのだ。 みんな北を向いたり、南を向いたり、くるくる回っている。どちらが低いのか?と迷っている。
大部分お人が南を向いた時、太陽が天頂を通り過ぎた。北と南では1分(1゚の60分の1)の差もなかった。
見事、士官の計算された罠にはまってしまった。 夏至の日に北回帰線上にいれば、当然太陽は真上にある。 学生達が右往左往する姿は、きっと相当面白かったに違いない。
その日のヌーンポジション(昼の位置)は 北緯23度26分、ほぼ北回帰線上であった。

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コメント

にけねこは
子午線と言えば明石の天文台しか思い浮かびません。
目印のないところで、
自身の居場所を特定する先人の知恵には頭が下がります。
どんなに機器が発達しても、
それを知っているのといないのとでは
違うような気がしてこだわるタイプなんです、
にけねこは。

投稿: にけねこ | 2013/08/24 19時17分

にけねこ<この場合の子午線は、太陽が自分のいる子午線上を通過すると言うこと。時刻はハッキリとは判らないので、朝の太陽の方向から割り出しているのですが、この時刻を正確に計算して表にする人達が凄いと思いますよ。
それらの業績を後世に残すことで、人類が発展してきたんですね。
同時に自然破壊も進んだことが悔やまれますが、、、

投稿: Samson♪ | 2013/08/24 23時25分

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